こんにちは!
トレイルランニングの世界に足を踏み入れると、様々な情報に触れることになります。ギア、トレーニング、補給戦略…そして、国内外のトップレベルのレースに出場したいと考えるようになると、必ず耳にするのが「ITRAポイント」という言葉です。
「ITRAポイントって何?」「どうすればもらえるの?」「なぜ必要なの?」
初めてこの言葉を聞いたとき、僕もそう思いました。
今回は、このトレイルランナーの「パスポート」とも言えるITRAポイントについて、その仕組みから具体的な取得方法、そしてなぜそれが重要なのかまで、皆さんの疑問をすべて解消できるよう、じっくりと解説していきたいと思います。

ITRAとは?
まず、「ITRAポイント」のITRAとは、「International Trail Running Association」の略で、日本語では「国際トレイルランニング協会」と訳されます。
この協会は、世界中のトレイルランニングレースの情報を集約し、ランナーや大会運営者、そしてトレイルランニングというスポーツ全体をサポートするために設立されました。
ITRAポイントは、この協会が認定したレースを完走したランナーに付与される、いわば「トレイルランナーとしての実績証明」のようなものです。
ITRAポイントの算出方法:「KmE(Kilometer-effort)」とは?
ITRAポイントは、単にレースの距離だけで決まるわけではありません。トレイルランニングの過酷さを公平に評価するために、ITRA独自の算出方法が用いられています。その鍵となるのが「KmE(Kilometer-effort)」、日本語では「キロメートルエフォート」と呼ばれる指標です。
KmEは、以下のシンプルな式で計算されます。
KmE = 距離(km) + 累積標高(m) / 100
例えば、あるレースの距離が100kmで、累積標高が4,800mだったとしましょう。
このレースのKmEは、「100 + 4,800 / 100 = 148 KmE」となります。
この計算式が示すように、トレイルランニングでは、平坦な100kmのロードレースと、アップダウンの激しい100kmのトレイルレースでは、走る労力が全く異なるという考え方がベースになっています。累積標高の数字が大きければ大きいほど、KmEも大きくなり、よりタフなレースだと評価されるのです。
KmEからITRAポイントへの換算
KmEが計算できたら、次はそれをITRAポイントに換算します。
ITRAの公式FAQ(https://itra.run/FAQ/Runner)によると、KmEとITRAポイントの換算は以下のようになっています。
KmE(Kilometer-effort) | ITRAポイント |
0 ~ 24 | 0 |
25 ~ 44 | 1 |
45 ~ 74 | 2 |
75 ~ 114 | 3 |
115 ~ 154 | 4 |
155 ~ 209 | 5 |
210以上 | 6 |
例えば、「奥信濃100」(https://okushinano100.com/)の100kmの部(距離100km、累積標高4,800m)の場合、
- 100km(距離) + 4,800m/100(累積標高) = 148KmE
となります。この148という値は、115~154KmEの範囲に収まるため、このレースを完走するとITRA 4ポイントが付与されることになります。
ITRAポイントは「レース出場のパスポート」
ITRAポイントは、単なる実績証明に留まりません。多くの国際的なビッグレース、特にウルトラディスタンスのレースでは、参加資格として一定以上のITRAポイントの保有が義務付けられています。
例えば、僕がいつか挑戦したいと思っている「Mt.FUJI100」では、参加資格のページ(https://mtfuji100.com/racers/regarding/)に以下のような条件が明記されています。
「FUJI100mi:ITRA Points 4以上の1レース、もしくはITRA Points 3の2レース」
つまり、「奥信濃100」を完走してITRA 4ポイントを獲得すれば、Mt.FUJI100への参加資格をクリアできる、ということになります。
このように、ITRAポイントは、自分が目指すレースに出場するための**「パスポート」**としての役割を果たしているのです。もし、皆さんが特定のレースに挑戦したいと考えているのであれば、まずそのレースの参加資格を確認し、必要なITRAポイントを事前に獲得できるレースを計画的に走っておく必要があります。
ITRAポイントを得るためのステップ
ITRAポイントを獲得するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- ITRAに申請・承認されたレースに出場するすべてのレースでITRAポイントが付与されるわけではありません。各大会の運営者がITRAにレースの情報を申請し、承認されることで、そのレースはITRAポイント対象となります。エントリーする前に、大会の公式サイトやITRAのウェブサイトで、ポイント対象レースかどうかを確認しましょう。
- そのレースを完走するITRAポイントは、完走者のみに与えられます。どれだけレースを走っても、途中でリタイアしてしまってはポイントは獲得できません。そのため、ポイントを獲得するためには、完走できるだけの準備と実力が必要となります。
ITRAポイントはあなたのレベルを証明してくれる
ITRAポイントは、世界中のトレイルランナーにとって共通の指標です。
例えば、ITRA 6ポイントを獲得しているランナーは、その距離と難易度のレースを完走できるだけの能力を持っていると、誰もが認めることになります。
これは、自分のレベルを客観的に把握できるだけでなく、海外のレースにエントリーする際にも、自分の実力を明確に伝えることができます。
ITRAポイントをコツコツと貯めていく過程は、トレイルランナーとしての成長の歴史そのものです。
最初はITRA 1ポイントのレースから。そして、徐々に距離が長く累積標高の高いレースに挑戦することで、2ポイント、3ポイント…とステップアップしていくことができます。
ITRAポイントを目標にすることで、トレーニングのモチベーションにもつながり、新たな挑戦への扉を開くことができるでしょう。
まとめ:ITRAポイントは冒険の地図
今回は、トレイルランニングの世界で重要な役割を果たすITRAポイントについて解説しました。
- ITRAは、国際トレイルランニング協会のこと。
- ITRAポイントは、KmE(距離+累積標高/100)という指標で算出され、ITRA認定レースの完走者に付与される。
- ITRAポイントは、憧れのレースに出場するための「パスポート」的な役割を担っている。
- ポイントは、自分のレベルアップを客観的に証明してくれる指標でもある。
ITRAポイントは、単なる数字ではありません。それは、あなたがこれまで歩んできたトレイルの道のりを証明し、そしてこれから目指すべき新たな冒険の地図を指し示してくれるものです。
さあ、ITRAポイントというパスポートを手に、次の素晴らしいトレイルへ旅立ちましょう!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント