こんにちは!
トレイルランニングのレースシーズン真っ只中、皆さんのトレーニングも佳境を迎えていることと思います。日々の走り込み、心肺機能の強化、そして山での実践練習。目標達成に向けて努力を重ねる日々は充実している反面、疲労も確実に蓄積しているはずです。
そこで今回は、皆さんが積み上げてきた努力を本番で最大限に発揮するために、非常に重要なプロセスである「テーパリング・ピーキング」について、僕自身の経験を踏まえながらじっくりと語りたいと思います。
テーパリングとは、レースに向けて徐々にトレーニングの量と強度を調整していく期間のこと。まるで研ぎ澄まされた刀のように、レース当日に最高のパフォーマンスを発揮できるよう、心身を整えていくための戦略的な準備期間と言えるでしょう。
テーパリングの方法は、まさに十人十色。直前まで積極的に走り込むことでレースの感覚を維持するタイプもいれば、徐々に練習量を減らし、最終的にはレース直前はほぼ休養に充てることで疲労を完全に抜き去るタイプもいます。どちらが良い悪いではなく、自分の身体の特性やレースの距離、これまでのトレーニングの質などを考慮して、最適な方法を見つけることが重要です。
今回は、あくまで僕自身の経験に基づいたテーパリング方法をご紹介します。皆さんのトレーニングの一助となれば幸いです。

僕のテーパリング:4週間かけて心身を最高の状態へ
僕のテーパリングは、大会の4週間前からスタートします。段階的に練習量を調整していくことで、疲労を抜きながらもレースに必要な感覚を維持することを意識しています。
大会4週間前:最後の追い込みと長距離への自信
この時期は、まだ積極的に走り込む期間です。特に、ロングディスタンスのレースに出場する場合は、この週に最長距離のトレーニングを行うことが多いです。レース本番を想定した距離や時間を走り、身体にレースペースを覚え込ませるとともに、補給や装備の最終チェックも行います。「これだけ走り込んだんだ」という自信をレース本番に繋げるための、重要な期間と位置付けています。
大会3週間前:走行距離を8割にセーブ
ここから、徐々に練習量を落としていきます。週間走行距離を、4週間前の約8割程度に減らします。例えば、4週間前に80km走っていたとしたら、この週は64km程度に抑えます。トレーニングの内容も、ロング走の距離を少し短縮したり、ペースをやや落としたりするなど、身体への負荷を軽減していきます。疲労が徐々に抜け始めるのを感じながら、身体の反応を注意深く観察します。
大会2週間前:距離は維持、ただし最長距離を短縮
この週の週間走行距離は、3週間前とほぼ同じ程度を維持します。しかし、ここで重要なポイントは、週の中で最も長い距離のトレーニングの距離を短くすることです。例えば、3週間前に20kmのロング走を行っていた場合、この週は10〜15km程度に留めます。全体の走行距離は維持しつつも、身体に大きな負担をかけるトレーニングを減らすことで、さらに疲労の回復を促します。
大会1週間前:最終調整、さらにボリュームダウン
いよいよレース本番まであと1週間。この週は、さらに走行距離を減らし、2週間前の約8割程度に抑えます。身体をフレッシュな状態に保つことが最優先となるため、無理なトレーニングは厳禁です。短い距離のジョギングや、軽い刺激を入れる程度のペース走などを中心に行い、レースの感覚を忘れないようにします。
大会週:休息と活性化
大会本番を迎えるこの週は、トレーニング量を大幅に減らし、1週間前の3〜4割程度に留めます。ほとんどの時間を休息に充て、身体の回復に努めます。ただし、完全に動かないと身体が重く感じる場合もあるため、2〜3回、20〜30分程度の軽いジョギングやウォーキングを取り入れることもあります。これは、身体を活性化させ、レースへの準備を促すためのものです。
テーパリング期間中の注意点
テーパリング期間は、身体が回復していく過程で、どうしても「もっと走りたい」という衝動に駆られることがあります。しかし、ここで無理をしてしまうと、疲労が再燃し、せっかくのテーパリングの効果が台無しになってしまいます。最も重要な注意点は、怪我をしないように細心の注意を払うことです。
また、走行距離は減らしますが、1回あたりのトレーニングの強度を極端に落とさないことも重要です。完全に楽なジョギングばかりにしてしまうと、レースに必要なスピード感覚が鈍ってしまう可能性があります。短い時間でも、少し心拍数を上げるような刺激を取り入れることで、レース本番での動きをスムーズに保つことができます。
食事でエネルギーをチャージ
テーパリング期間は、トレーニングと同様に食事も重要です。
大会の約1ヶ月前からは、極端な体重の増減を避けるように心がけましょう。特に、無理なダイエットは筋肉量を減らし、体力の低下を招く可能性があります。バランスの取れた食事を基本とし、体重を維持することを意識します。
そして、大会週に入ったら、炭水化物を意識的に少し多めに摂るようにします。これは、レース本番でエネルギー切れを起こさないための「カーボローディング」と呼ばれる手法の簡易版です。ただし、急激な食事の変化は消化不良の原因となることもあるため、普段の食事に少しずつ炭水化物の割合を増やしていくのがおすすめです。
疲労回復をサポートするリカバリー
トレーニング量の調整と並行して、リカバリーにも力を入れることが、テーパリングの効果を高める上で非常に重要です。特に、ストレッチとマッサージは念入りに行いましょう。
毎日の入浴後やトレーニング後には、時間をかけて全身の筋肉を丁寧にストレッチすることで、筋肉の柔軟性を維持し、疲労物質の排出を促します。また、セルフマッサージや専門家によるマッサージを受けることも、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進するのに役立ちます。フォームローラーやマッサージガンなどのツールを活用するのも効果的です。
まとめ:テーパリングはレース成功への重要な戦略
テーパリングは、単なる休息期間ではなく、レースで最高のパフォーマンスを発揮するための戦略的な準備期間です。自分の身体と対話しながら、最適な方法を見つけ、実践していくことが、目標達成への近道となります。
今回ご紹介した僕のテーパリング方法が、皆さんのトレーニングの一助となれば幸いです。しっかりと疲労を抜き、エネルギーをチャージして、最高のコンディションでスタートラインに立てるよう、祈っています!
それでは、レース当日、皆さんが笑顔でゴールテープを切れることを楽しみにしています!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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